ピュアイリュージョンとはどういうものなのでしょうか? 押山:僕の中でも「こういうもの」と決めつけないようにしているんです。始めのうちは「ピュアイリュージョン=環世界にしましょう」という段階もあったのですが、そうするとピュアイリュージョンという世界の可能性が閉じてしまいますし、環世界ではルール付けができないような気がしたので、はっきりと「環世界ではない」と決めました。ただ、環世界や集合的無意識に近しいものとは思います。僕の中では「現実に含まれている多層レイヤーみたいなもの」という意識はあるのですが、それだと環世界と変わらないので、無限の可能性を持った世界として捉えていただければと思います。 ソルトの父親が所属していた研究所はアスクレピオスと同じものですか? 押山:同じものではありません。系譜としてはアスクレピオスの元になった施設ですが、そのー部から派生したものがアスクレピオスになったというニュアンスです。当初の設定では、研究所自体はそれほど大きな規模ではありませんでした。あくまでミミというすごい能力を持った少女が現れたので、その能力を研究したい人たちが集まって、心理学や生物学などをまぜこぜにした研究をしている場所と考えていただければと。施設の目的としては、それほど悪いことを考えていたわけじゃなかったのですが、たまたまそこで事故が起きた結果、行きすぎた人たちがまとまって悪い方向に行ってしまった。まぁ、パピカを使って人体実験めいたこともやってますけど(笑)。あ、ちなみにパピカは普通の人間です。ちょっと個性的すぎるところはありますけど、この世界では人間の範疇に含まれるレベルかなと。 研究所から分派したと思しきフリップ·フラップ側の目的は? 押山:基本的にはソルトの個人的な目的があって、ヒダカとサユリは、それを知らされないまでもソルトに従っているという立場ですね。この2人は、それ以前の研究所にも所属していません。裏設定として、「ソルトはドクターと呼ばれているくらいだから、おそらく生計を立てるために変装してどこかの大学で講師をしていたに違いない。そのときの学生の中にサユリがいたのだろう」という(笑)。その後の事情については本編を見ていただければおわかりいただけるかなと。同じドクターであるヒダカは、世代の離れているソルトをなんらかの理由で尊敬していて、さらに自分のやりたいことをやらせてもらえるということで協力しているのでしょう。 アスクレピオスの最終的な目標は? 押山:本編中でも多少ふれていると思いますが、ミミの力を利用してピュアイリュージョンを現し世に影響させることですよね。それはつまり、集合無意識的なものを操れるということですから、ひいては世界を統一できるでしょうね。大神官の正体については、声を聞いていただければ分かっていただけるかと思います(笑)。EDのクレジットにもいろいろ小ネタが仕こまれていて、本編中には名前の登場しないキャラクターもクレジットには名前が出ていたりします。 パピカはなぜミミのことを忘れてしまったのでしょうか? 押山:ミミの起こした事故のあと、パピカは非常に不安定な空間に囚われてしまい、その影響が出たと思われます。最終話でも描かれる部分です。僕は「ピュアイリュージョンの狭間」と呼んでいるのですが、時間さえも不安定な場所で、記憶だけでなく年齢にも影響したのではないかと。過去に研究所で実験を受けている間に、パピカは設定上19歳まで成長しているのですが、「狭間」に囚われている間に、記憶や年齢がリセットされてしまったと考えています。そのときに幽体離脱したココナに出会って、助けてもらったという設定があります。ミミの娘であるココナは、ミミほどではないが彼女に近しい能力を受け継いでいて、かつミミの欠片を体内に宿しているので、幼少時からピュアイリュージョンへ赴いていました。ミミとは違い、自分の半分だけ、つまり幽体離脱のような状態ですけどね。その曖昧な世界で、ミミのような存在に出会ったり、パピカに出会っていた。一方、パピカもココナと出会い、彼女の匂いを覚えていた(笑)。それが第1話の冒頭につながるわけです。ちなみに大事なことなんですが、記憶を取り戻したパピカは心の年齢が昔の19歳に戻ったのではなくて、生まれ変わり、あくまで前世の記憶を思い出したという設定です。ですから現在のパピカがもともと持っていた気持ちや幼児性などは、記憶を取り戻したあとも無くなりません。